現代画報2007年8月号に掲載されました!

時代を切り拓く経営者に聞く ――― 東京 ―――

渡嘉敷

まずは『渡辺ネームプレート』さんの、これまでの経緯からお聞かせ下さい。

渡辺

1973年に、父が当社を創業。創業当時は板金加工をメインに手掛けていたんです。しかし、樹脂の普及により板金加工の需要が下降してきたのを受け、 板金パネルや金属銘板といった板金加工技術を活かした印刷事業を新たに展開。先代から私に代替わりをしてからは、より印刷事業に力を入れています。

渡嘉敷

社長は最初から家業を引き継ごうと考えていらっしゃったのですか。

渡辺

次男ということもあって、最初は考えていませんでした。けれど、18歳から家業に入り、父のもとで技術を習得していくうちに、この仕事にやり甲斐を見出し、自然な形で事業を引き継ぐことに。 しかし、引き継いだ当時はバブルが崩壊した直後で、経営は非常に厳しかったんですよ。

渡嘉敷

そうした困難をどのように乗り越えられたのですか。

渡辺

現状を打破するため、新しいことに積極的に取り組みました。板金加工から印刷業に主力業務をシフトしたのもその一環です。主力業務を変更するとなると、これまでとは別の能力が求められます。特に印刷業は 1ミリのズレがミスにつながるという細かい作業の連続です。そのため、若手のスタッフを増員するなど体制の強化にも力を入れてきました。

渡嘉敷

それでは、現在の詳しい事業内容についてお聞かせください。

渡辺

スクリーン印刷を得意としており、Tシャツやトレーナー、ライターなど、どのような素材にもきめ細やかな印刷を施しています。そうした特殊な技術を 有していることで、他の企業から一緒に事業をやろうと声をかけてもらうこともあるんです。スノーボードの印刷も、会社を経営している知人から誘われてスタートしたんですよ。また、シール印刷も手掛けています。 製造物責任法(PL法)が施行され、使用方法の注意を呼びかけるシールの需要が高まってきており、当社ではそれらのシール印刷を請け負っているんです。その他にも、カッティングシート、板金塗装、エッチング加工、 アルマイト加工、彫刻銘板などを取り扱っています。

渡嘉敷

板金加工の技術を基盤に、印刷業務を大きく発展させているのですね。

渡辺

今、特に力を入れているのは、児童を犯罪から守るために作られた「保護者カード」です。学校で授業参観などがあれば不審者の侵入を防ぐことは難しいですよね。 そこで、保護者と児童の名前や住所といった情報を取り込んだカードを保護者に配布すれば、そのカードが身分証明書代わりとなり、部外者との判別が可能となります。 現在、ある幼稚園で導入に向けて準備が進んでいるんですよ。これから自治体などにもアピールしていく構えです。

渡嘉敷

また新たな事業を展開されるのですね。

渡辺

カードには印刷が必要ですから、まったく異なった事業ではないのですよ。「保護者カード」は、板金加工、印刷など、これまで手掛けてきた事業の延長上にあると考えています。 今後もまったく新しい事業を展開するつもりはありません。異業種を手掛けるとなると、新しい営業先を開拓するなど、それだけリスクが高くなります。 けれど、事業の延長上であれば、それまでのつながりを活かしながら事業を広げることができる。板金加工という、当社の創業からの起点を大事にした展開を これからも貫いていきたいと考えているんです。

渡嘉敷

事業の柱を変えずに新しいことにもチャレンジしていく・・・。発想力がなければできないことですよね。

渡辺

たくさんの人と話をしていく中で、様々な案を生み出しています。スタッフとも週に1回はミーティングの場を設けており、意見交換をはじめ、いかに高品質を保ちながら 短納期を実現するかといったことを話し合っているんです。そうしてスタッフと最善の方法を検討した結果、不良品を出さないために合計3回の検査体制を整えたのですよ。

渡嘉敷

スタッフの皆さんと共に会社をもり立てていらっしゃるのですね。

渡辺

経営が厳しい時期、私は営業のためにほとんど外に出回っていました。業務に専念できたのも、私が留守の間も会社を守ってくれるスタッフがいたからです。 そうした信頼のおけるスタッフと共に、今後も「保護者カード」のように、社会に役立つ商品を提供していきたいですね。

渡嘉敷

私も応援しています。本日はありがとうございました。

▼「伝統は革新の連続である」と、ある経営者の言葉にもあるように、受け継いできた技術を活かすには、 時代に即した発展が欠かせない。その経営方針を実践しているのが、『渡辺ネームプレート』の渡辺真人社長だ。 社長は、創業以来手掛けてきた板金加工の技術を基盤に、印刷事業を展開。スクリーン印刷を主力として、 様々な素材への印刷を実現している。さらにシール印刷など、特殊印刷の技術を向上させながら、板金塗装 や彫刻銘版など、概存事業の充実にも取り組んできた。
▼そんな中、社長が特に力を入れているのが「保護者カード」だ。
児童の名前や住所などの情報が入ったカードを保護者に配布することで、部外者との判別を 可能にし、児童を犯罪から守るというもの。児童の安全をどのように確保するかが、大きな社会問題となっている中で、 同社の取り組みは各自治体からも注目されているという。
▼「子どもを巻き込む犯罪防止の一助になれば」と、「保護者カード」の改良に尽力する社長。今後も技術向上を 図ることで、社会貢献につながる商品の開発に取り組んでくれることだろう。